肩コリコの日常

ゆる〜く日常を綴ります。

辺見庸「もの食う人びと」③

「ピナトゥボの失われた味」(フィリピン先住民アエタ族


アエタ族。類稀なる野外生活の達人。独自の時間感覚や物語、豊かな自然食文化を持つ。心優しい少数民族。


「暴力に対して暴力で立ち向かうことはほとんどない。そもそも暴力事件が生じることさえめったにない」(清水展著「出来事の民族誌」)


1991年のピナトゥボ大噴火で山の生活を捨て下界に下りてきて避難生活を送る。ほぼ2年間の下界生活で味覚が激変。長老がネスカフェ(インスタントコーヒー)の虜になる!


アエタ族の間でネスカフェ論争と缶詰イワシ論争があった。意見は二分。加工食品や避難先の閉塞的生活に耐えきれず、精神に異常をきたした末、火山灰に覆われた山に戻り行方知れずになった者もいるという。


若者がビールやジンを好んで飲むようになってからというもの山では数少なかった家族喧嘩などのトラブルが続出している。


長老は言う「酔って考えることと、さめて考えることが違うなんておかしなことだ。」


語り継いできた民話、野外で生きる術、植物の毒抜き法、植物からの水の採取法も山の味と共に下界生活の中で忘れられていくのだろう。


山での食事は「嘘のない味」

小鳥の声、木々の葉と風の歌、せせらぎのささやきを聞きながら食べていた

竹筒御飯、蛇、花の蕾、きのこ、黄金虫、蛙、キャッサバ(芋)など。



(とんこさん。画像をお借りしました。有難うございます。)