辺見庸「もの食う人びと」④
「人魚を食う」
(フィリピン、マニラの西280kmの
ブスアンガ島)
人魚(ジュゴン)はとても旨いらしい。
民俗学者の柳田国男も書いている。
「肉ありその色は朱のごとく美味なり。人魚の肉と名づく。」
南方熊楠も「人魚の話」に書いたそうだ。「1668年(寛文8年)、コリン著『フィリピン島宣教志』P80に、人魚の肉食うべく、その骨も歯も切り傷に神効あり、とあり」
現地の人が言う。「羊よりイルカ。イルカより豚。豚より牛。牛よりジュゴンが旨い。」
食べるに都合良さそうな言い伝えが島にある。「その昔、親不孝で分からず屋の若い男女がいた。親が神様になんとかしてくれと頼んだ。怒った神様は二人をジュゴンにしてしまった。」
そんな美味しいジュゴンだから、1960〜1980年代に乱獲された。近年規制が厳しくなって、親戚、知人同士の小口の売買になっている。中国人が密かに売買しているらしいという噂もある。
味というものと動物保護の関係はじつに難しい。
(とんこさん。画像をお借りしました。ありがとうございます。)
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